日本語教育

N2合格後に会話で困る学習者へ|教師が確認したい場面と練習の組み立て方

N2合格後に会話で困る学習者を、教師はどう支援するか。JLPTの測定範囲と会話の観察を分け、架空の相談場面から、追加確認・練習目標・支援条件・振り返りの進め方を説明します。

日本語学校で学習者の話を聞く先生ともう一人の学習者のイラスト
日本語教育 J-GRADE MEDIAN2合格後に会話で困る学習者へ|教師が確認したい場面と練習の組み立て方
高田健太多言語音声対話AI・会話能力評価の開発

N2に合格した学習者から「説明を聞くことはできるのに、相談になると返事が続かない」と言われたら、どこから支援すればよいでしょうか。「N2なのに話せない」とひとまとめにすると、すでにできることも、練習したいことも見えにくくなります。

まずは、誰と、何をする会話の、どこで困ったのかを確認しましょう。本記事では、資格の測定範囲を押さえたうえで、実際のやりとりを観察し、一つの練習目標へつなげる進め方を提案します。合格者に共通する心理的原因や、国籍別の特徴を説明する記事ではありません。

JLPTの合格と、会話で確かめること

JLPTは言語知識・読解・聴解を測っています。公式説明では、CEFRレベルの参考表示にも、JLPTで測定していない「話す・書く」「やりとり」などの能力は含まれません。したがって、N2の合格や成績書類のCEFR表示だけで、ある会話場面をどこまで行えるかは直接確認できません。JLPT「CEFRレベル参考表示」3(2)(3)

これは、合格までに得た成果を否定する理由にはなりません。また、N2合格者は会話が苦手だという意味でもありません。資格で確認された成果はそのまま受け止め、授業では必要な会話を別の材料で見ていきます。

教師からは、「試験で確認した力と、今回練習したい会話を分けて見ましょう」と伝えられます。最初から文法の学び直しを一式課すのではなく、目の前の課題で何ができるかを確かめてから練習を選びます。

「話せない」を、観察できる一場面にする

初めに、学習者が会話で困った場面を一つ選びます。「もっと話したい」だけなら、「授業中に質問したい」「窓口で手続きについて相談したい」など、本人が使いたい場面を聞きます。そのうえで、相手、目的、どこまで進めたいかを一緒に決めます。

以下は授業設計のための架空例です。実在の学習者の体験、公式問題、J-GRADEの出題例ではありません。

学習者は、学校の事務室で証明書の受け取り方法を相談します。窓口の担当者へ、希望する受取日と、その日に取りに行ける時間を伝えます。担当者は、その時間には窓口が閉まっていると知らせます。学習者が別の受取方法を尋ね、どうするかを決めるまでを課題にします。

観察では、会話全体への印象をいったん置き、希望の説明、相手の条件の理解、不明点への質問、最終的な返答のどこまで進んだかを記します。最初の希望を言えたなら、それも次の練習を考える出発点です。

止まった箇所に合わせて、次の練習を選ぶ

国際交流基金の会話評価教材では、会話の目的が達成されたかを見る観点と、それを支える表現などを見る観点を分けています。この区別を使い、目的に届かなかったことと、個々の表現の誤りを分けて扱いましょう。『会話の教え方』Unit 2 Part 2、5〜9ページ

次の表は、先ほどの場面から作った架空の練習案です。困難の原因を診断する表でも、学習効果が実証された指導法の一覧でもありません。

観察した様子追加で確かめること次の練習案
「証明書」とだけ伝えて、その後が続かない希望日や用途を別々に聞けば答えられるか伝える情報を整理してから、ひと続きの依頼にする
窓口が閉まるという返答の後、同じ希望を繰り返す相手の条件を本人の言葉で確かめられるか聞いた条件を確認し、別案を質問する
別の方法を尋ねられたが、受け取り方を決めずに終わる選択肢と、本人が選びたいものを把握しているか選択と最終確認を言葉にして会話を閉じる

たとえば二行目なら、聞き取れた内容を確かめずに「返事の表現が足りない」と決めないことです。教師が条件を言い直した後に質問できたなら、「言い直し後に質問できた」と記録します。その事実だけで、普段から聞き取りが不得意だと一般化する必要はありません。

沈黙から意欲や性格を決めることも避けます。本人の説明を聞くことと、教師が観察した発話を記すことは別です。「本人は選択肢を考えていたと説明した」「発話としては返答を確認できなかった」のように分けると、次に何を試すかが具体的になります。

支援を入れた練習と、支援なしの確認を分ける

練習中は、情報を整理するメモや、質問を始める表現を示す方法が考えられます。ただし、支援を受けてできた結果を、そのまま一人でできる力と扱わないようにします。

先ほどの架空例なら、まず「希望する日」「行ける時間」「難しい場合に尋ねたいこと」をメモし、会話を試します。次に、メモの一部を外して、同じ目的のやりとりを行います。どこまで自分で続け、どこで教師が促したかを残してください。支援を外して止まった箇所は、次に練習する候補です。

同じ会話の台本を覚えたかどうかだけで終えないよう、次の確認では、日付や提示される選択肢を変える方法もあります。ただし、条件を難しくした分まで「伸びていない」と評価しないよう、前回と変えた点を記録します。これらは授業で試す提案であり、短期間の上達を保証するものではありません。

本人と、次に確かめることを一つ決める

練習後の面談では、「何点上がったか」だけでなく、「何ができるようになりたいか」に戻ります。架空のフィードバック例なら、「受け取りたい日は伝えられました。次は、希望の時間が難しいと言われた後で、別の方法を一つ尋ねてみましょう」と伝えられます。

本人には、話しやすかった部分と、まだ言葉にしにくかった部分を聞きます。次の授業で使う課題と支援の条件も一緒に決めれば、振り返りの対象がはっきりします。一度うまくできただけで、どの窓口でも同じようにできるとはせず、必要に応じて別の場面でも確かめます。

会話の現状を外部の材料でも確認したい場合は、結果をどの練習に結び付けたいかを先に考えてください。J-GRADEは日本語の会話能力を判定するサービスで、心理的な原因や人物像を診断するものではありません。

J-GRADEのレポート例を見て、授業での観察とどう組み合わせるかを検討できます。学校での活用については、PLUS IMPACTのお問い合わせフォームへご相談ください。

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