学習・成長

日本語の会話が上達したか分からないときに――できることで振り返る方法

日本語の会話の上達を、できたことと相手の助けから振り返る方法を紹介。架空の記録例を使い、前後の条件のそろえ方と次の練習の決め方を説明します。

録音を聞きながらノートで会話を振り返る学習者のイラスト
学習・成長 J-GRADE MEDIA日本語の会話が上達したか分からないときに――できることで振り返る方法
高田健太多言語音声対話AI・会話能力評価の開発

日本語の勉強を続けていても、「前より話せるようになった」とはっきり言えないことがあります。そんなときは、前回と今回の会話で、何ができたかを具体的に残してみましょう。

記録するのは、間違いの数だけではありません。自分から伝えた内容、聞き返して分かったこと、相手に助けてもらった部分も材料になります。この記事では、一つの会話場面の前後を比べ、次に練習することを選ぶ手順を紹介します。

比べる目標を、一つの会話場面にする

最初に、「すらすら話す」よりも具体的な目標を決めます。例えば「約束を変更したいとき、理由を短く伝え、別の日を相談する」という形です。何ができれば目標に近づいたと言えるのかを、練習前に書いておきます。

こうした目標を考える参考になるのが、日本語を使ってできることを表すCan-doです。文部科学省の「生活Can do」の説明でも、学習者の状況に応じて項目を選ぶことや、学習の記録をまとめたポートフォリオなどによる振り返りが示されています。文部科学省「生活Can do」の説明

自分のノートには、今使う予定のある場面を書いてみてください。目標が多ければ、今回見るものを一つ選びます。約束の相談と、授業の感想を詳しく述べることでは、話す内容も相手とのやりとりも異なるからです。

以下で使う約束変更の場面、記録表、会話文は、この記事のために作った架空例です。実際の学習者の成果、公式のCan-do尺度、J-GRADEの出題内容ではありません。

できたことと、相手の助けを一緒に残す

「約束を変更できた」と書くだけでは、どのように話が進んだのかが分かりません。自分で理由や別の日を伝えたのか、相手に一つずつ聞かれて答えたのかも残します。

例えば、練習相手は友人の役、自分は予定を変えたい役と決めて話します。終わった後に、次のような形で記録できます。

記録すること前回の架空記録今回の架空記録
目標と課題約束を変える理由を伝え、別の日を相談する前回と同じ種類の相談をする
条件同じ先生と、台本なし。準備に使える時間も同じ同じ先生と、台本なし。日付と理由だけ変えた
自分から言えたこと約束の日に会えないこと会えないこと、短い理由、別の日の提案
相手の助け「どうして?」「いつならいい?」と順に聞いてもらった最後に先生が日付を確認した
残ったこと理由を言おうとして止まった集合時間を相談せずに終わった

この例で書ける変化は、「今回は、理由と別の日を自分から伝えた」ということです。「会話力が一段階上がった」とまでは、この記録だけでは言えません。最後の時間確認が抜けたことも、次に確かめる内容として残ります。

ノートを長く書く必要はありません。日付、目標、条件、できたこと、助け、次の練習を短く残すところから始められます。会話を録音して振り返る場合は、相手の了解を取り、使い道と保存先も決めておきましょう。

前後で、課題と条件が違っていないかを見る

前回は台本を見ながら話し、今回は何も見ずに話したとします。今回の方が言葉に詰まったとしても、条件が違うので、詰まった回数だけで後退と決めないようにします。

比べる前に、場面と話す目的、準備時間、台本やメモの有無、相手の助け方を見返してください。違う部分があれば、そのまま記録に添えます。生活の中で起きた会話は条件をそろえにくいため、練習の記録と区別して残す方法もあります。

一方、前回と全く同じ会話文を覚えて言えた場合は、「その会話文を言えた」という成果として記録できます。予定を相談する力をもう少し確かめたければ、相手の都合や日付を変えて話してみましょう。暗記した内容を再現する練習と、返事に合わせて話す練習を、別に用意する考え方です。

ただし、内容を変えれば難しさも変わり得ます。同じ種類の課題にしたからといって、厳密に同じ難しさのテストになったとは扱わず、何を変えたかを書き残してください。

点数や自己評価が動いた理由を、すぐに決めない

前より自己評価を低く付けたときは、まず「何を根拠にそう思ったか」を一文にします。「前回は約束の日を言えればよいと思ったが、今回は理由まで説明できるかを見た」なら、自分が見ている項目も変わっています。

反対に、自己評価が上がったときも、実際のやりとりを添えましょう。「よく話せた」より、「相手に聞かれる前に理由を説明した」の方が、先生と同じ箇所を振り返れます。

テストの点数を比べる場合は、同じ試験・尺度なのか、点差をどう読むのかを先に確認してください。説明がなければ、小さな差だけを成長量として扱わず、会話の記録と合わせて提供者や先生に尋ねます。何点上がれば確実に上達したと言えるかは、この記事では決めません。

振り返りの最後に、次の練習を一つ選ぶ

国際交流基金の『まるごと』では、授業後にできたことを自分で評価する活動を重視しています。国際交流基金『まるごと』の教え方・Q81

記録を次に使うには、「まだできないこと」を並べて終わらず、次の会話で試す行動を一つ決めてみてください。先ほどの架空例では、日付の相談はできたので、「最後に集合時間も確認する」が候補になります。

練習文なら「では、日曜日の午後二時でいいですか」と確認し、相手の返事まで聞きます。この文を必ず使う必要はありません。自分の言い方で、双方の予定を確かめられたかを見ます。

先生と振り返るときも、ノートを見せて「この場面のどこが前回と変わりましたか」と聞いてみましょう。自分の感想と先生の観察が違ったら、どの発話を見ているかを確かめます。話していない場面については、まだ分からないものとして次の確認に回せます。

会話テストの結果も、記録の一部として使う

学習ノートに会話テストの結果を加える場合は、実施日と試験名、結果の説明を一緒に残します。練習ノートの目標と試験が測る内容は必ずしも同じではないので、そのまま一つの点数にまとめる必要はありません。

J-GRADEは、日本語の会話能力を判定するためのアセスメントです。J-GRADEのレポート例で結果の見方を確認し、自分の学習記録とどう使い分けるかを考えてみてください。会話力の判定を、人柄や努力の量の評価として受け取らないことも大切です。

学校などで結果の活用を相談したい方は、PLUS IMPACTのお問い合わせフォームから「J-GRADEについて」とお知らせください。まずは今日の会話で自分から伝えられたことを一つ書き、次に試すやりとりを決めてみましょう。

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