昨日は日本語で長く話せたのに、今日は短い質問にも答えられなかった。勉強を続けているとき、そんな会話があると「前より上手になっているのだろうか」と迷うかもしれません。
その日の感想だけで比べる前に、何を話し、どんな助けを受けたかを見返してみましょう。同じ「話せた」でも、自分から説明した場合と、相手の質問に一つずつ答えた場合では、会話の進み方が違います。
この記事では、できたことを記録し、前回から変わったところを次の練習へつなげる方法を紹介します。間違いの数だけでなく、自分から伝えた内容や、聞き返して分かったことも残していきます。
この記事の目次を開く

比べる前に、できるようになりたい会話を一つ選ぶ
「すらすら話す」を目標にすると、何ができれば近づいたと言えるのか迷います。「約束を変更したいとき、理由を短く伝え、別の日を相談する」と書けば、練習の後に見ることが具体的になります。
目標を考える参考になるのが、日本語を使ってできることを表すCan-doです。文部科学省の「生活Can do」の説明でも、学習者の状況に応じた項目選びや、学習の記録をまとめたポートフォリオなどによる振り返りが示されています。
自分のノートには、今使う予定のある会話を書いてみてください。目標がいくつもあれば、今回は一つ選びます。予定の相談と授業の感想では、必要な説明も相手とのやりとりも違うからです。
何を確かめればよいか決められない場合は、今の会話力を確かめる方法から始められます。ここから先は、比べたい場面が決まったとして記録を作っていきましょう。
以下の約束変更の場面、記録表、会話文は、この記事のために作った架空例です。実際の学習成果、公式のCan-do尺度、J-GRADEの出題内容ではありません。
「できた」の隣に、相手が助けたことを書く
約束の日を変えられたとしても、自分から理由や別の日を話したのか、相手に聞かれて答えたのかは、結果だけでは分かりません。会話が終わった後、相手の言葉も思い出してみます。
例えば、練習相手は友人の役、自分は予定を変えたい役として話した場合、次のように記録できます。
| 記録すること | 前回の架空記録 | 今回の架空記録 |
|---|---|---|
| 目標と課題 | 約束を変える理由を伝え、別の日を相談する | 前回と同じ種類の相談をする |
| 条件 | 同じ先生と、台本なし。準備に使える時間も同じ | 同じ先生と、台本なし。日付と理由だけ変えた |
| 自分から言えたこと | 約束の日に会えないこと | 会えないこと、短い理由、別の日の提案 |
| 相手の助け | 「どうして?」「いつならいい?」と順に聞いてもらった | 最後に先生が日付を確認した |
| 残ったこと | 理由を言おうとして止まった | 集合時間を相談せずに終わった |
この例なら、変化は「今回は、理由と別の日を自分から伝えた」と書けます。前回も約束の変更はできていますが、相手の質問を待たずに伝えた内容が増えています。一方、集合時間はまだ相談していません。できたことを残すのと同じように、次に確かめる内容も見えてきます。
この記録だけで「会話力が一段階上がった」とまでは言えません。分かったのは、この条件で行った予定相談の変化です。その範囲を保つと、何をもう一度試せばよいかを決められます。
毎回、長い文章を書く必要はありません。日付、目標、条件、できたこと、助け、次の練習を短く残しましょう。録音して振り返る場合は、相手の了解を取り、使い道と保存先も決めておきます。
話しにくかった日は、前回との条件の違いを見る
前回は台本を見ながら話し、今回は何も見ずに話したとします。今回は言葉に詰まったとしても、詰まった回数だけで後退と決めるのは早いかもしれません。まず、何を見ながら、どんな準備をして話したかを比べます。
見返すのは、場面と話す目的、準備時間、台本やメモの有無、相手の助け方です。違うところがあれば、記録に添えてください。生活の中で偶然始まった会話は条件をそろえにくいので、条件を決めた練習と分けて残す方法もあります。
反対に、前回と全く同じ会話文を覚えて言えたなら、それも「その会話文を言えた」という成果です。相手の返事に合わせて相談できるかを確かめたければ、日付や相手の都合を変えて話してみます。
暗記した会話を再現する練習と、返事を聞いて話す練習は、目的が違います。ただし、内容を変えれば難しさも変わり得ます。同じ種類の相談だから厳密に同じ難しさだとは扱わず、変更した部分を残しましょう。
自己評価や点数が動いたら、根拠を一文にする
前より低い自己評価を付けたときは、「何を見てそう思ったか」を書いてみてください。「前回は日付を言えればよいと思ったが、今回は理由まで説明できるかを見た」なら、比べている項目も変わっています。
自己評価が上がったときも同じです。「よく話せた」だけでなく、「相手に聞かれる前に理由を説明した」と書けば、先生と同じ箇所を見返せます。感想を消す必要はありません。その感想につながった会話を添える考え方です。
先生の評価と自分の感想が違ったら、すぐにどちらかを正しいと決めず、どの発話を見ているのか尋ねましょう。教師と観察するポイントを共有する背景は、会話評価の基準とルーブリックの作り方で説明しています。自分で公式のレベル表を作る必要はありませんが、「何ができたら目標に近づいたと言えるか」は相談できます。
テストの点数を比べる場合は、同じ試験・尺度なのか、点差をどう読むのかを確認してください。説明がなければ、小さな差だけを成長量として扱わず、会話の記録と一緒に提供者や先生へ尋ねます。何点上がれば確実に上達したと言えるかを、ここで決めることはしません。
記録を読み終えたら、次に試す行動を決める
記録は、できなかったことの一覧で終わらせず、次の会話へ持っていきたいところです。国際交流基金『まるごと』の「テストと評価」Q81でも、授業後にできたことを自分で評価する活動が重視されています。
先ほどの例なら、次は「別の日を提案する」を繰り返すだけでなく、残っていた集合時間の確認を加えられます。次の図は、比較表から練習へ進む流れです。記録の項目を増やす図ではなく、書いたことをどう使うかを示しています。
一つの変化を、次の会話へつなげる- 01変わったことを読む今回は、理由と別の日を自分から伝えられました。
- 02残ったことから選ぶ相談しなかった集合時間を、次に確認することにします。
- 03返事まで確かめる時間を提案し、相手の返事を聞いて予定を確認します。
練習文なら「では、日曜日の午後二時でいいですか」と確認し、相手の返事まで聞きます。この言い方を必ず使う必要はありません。自分の言葉で、双方の予定を確かめられたかを見てください。
先生と振り返るときも、ノートを見せて「この場面のどこが前回と変わりましたか」と聞いてみましょう。まだ話していない場面については分からないものとして残し、次の確認へ回せます。
自分の記録に加えて、会話テストの結果を見る
学習ノートには、日々のできたことを細かく残せます。それでも「自分では気づかない話し方の特徴も知りたい」と思ったら、実際に話した内容を評価する会話テストが選択肢になります。
J-GRADEは日本語の会話能力を判定するアセスメントです。レポート例を開き、課題の達成度と会話の特徴・所見を見てみてください。「どんなことを伝えられたか」「次の練習で何を確かめたいか」を考えるとき、どの情報が役立ちそうでしょうか。
受験した場合は、結果を実施日と一緒に残し、自分のノートと並べて使います。日々の練習と試験では課題や条件が異なるため、点数の変化だけで上達を決めるのではなく、何を話せた結果なのかも見返しましょう。会話力の評価は、人柄や努力の量の評価ではありません。
まずは例を見て、自分が知りたいことが載っているか確かめてください。受験案内も確認できます。受験を考えている方は、J-GRADEの受験について相談するから、会話力を知りたい目的と受験希望をお知らせください。実施方法や利用条件を確認してから検討できます。
